商品売買における仕訳の続きです。
今回の仕訳は、三分法で解説します。
(仕入、売上、繰越商品の勘定科目を用いるのが三分法です。)

掛けで商品を仕入れたり、売り上げた時

田舎の個人居酒屋で、常連さんが「会計はつけといて!」と言っているのを聞いたことはありますか?
あれはお金を払わずに飲み食いしてるのではなく、後日お金を払います、という意味です。
大体は月末にまとめて支払う場合が多いです。

このように、取引の度に代金を支払うのではなく、後日にまとめて支払うことを掛けかけと言います。
掛けのメリットは、支払いの回数が減るので楽になるということです。
しかし、掛けでの取引が成立するには、信頼関係が築かれていることが重要です。
(信頼関係が築かれてないと、代金を踏み倒されてしまいます。)
規模の小さな商店では現金取引が多いですが、そこそこの規模の企業間取引では、掛け取引が一般的です。

掛けで商品を仕入れた時

以下で掛け取引を仕訳してみましょう。

①A商店は、仕入先であるB商店より商品100円を仕入れ、代金は掛けとした。

(仕入)100 (買掛金)100

ここで、買掛金かいかけきんという新しい勘定科目が出てきました。
買掛金は”お金を後で支払わなければならない義務”なので負債に分類されます。負債が増えれば貸方(みぎ)なので、今回は買掛金を右に書きます。

また、後日買掛金を支払った時の仕訳は以下のようになります。

②A商店は、B商店に対する買掛金100円をを現金で支払った。

(買掛金)100 (現金)100

買掛金を支払ったときは、”お金を後で支払わなければならない義務”がなくなるので、買掛金(負債)が減ります。

掛けで商品を売り上げた時

続いて商品を掛けで売り上げた時の仕訳です。

③A商店は、得意先B商店に商品150円を売り上げ、代金は掛けとした。

(売掛金)150 (売上)150

ここで、売掛金うりかけきんという新しい勘定科目が出てきました。
売掛金は”お金を後で受け取れる権利”なので資産に分類されます。資産が増えれば借方(ひだり)なので、今回は売掛金を左に書きます。

また、後日売掛金を回収した時の仕訳は以下のようになります。

④A商店は、B商店に対する売掛金を現金で回収した。

(現金)150 (売掛金)150

売掛金を回収したときは、”お金を後で受け取れる権利”がなくなるので、売掛金(資産)が減ります。

商品の返品、値引きがあった時

仕入れた商品を品違いなどの理由から返品したり、仕入れた商品の品質不良や破損などの理由から購入金額を値引きしてもらうことがあります。
このように、返品や値引きがあった時の処理について解説します。

商品の返品があった時

まず最初に、仕入れた商品を返品した時の仕訳を見ていきます。

⑤A商店は、B商店より掛けで仕入れた商品100円のうち、品違いのため10円を返品した。

(買掛金)10 (仕入)10

間違った商品が送られてきたときは商品を返品します。
このようにいったん仕入れた商品を、仕入先に返品することを仕入戻しと言います。
仕入戻しをしたときは、返品分の仕入れを取り消して、返品分の仕入をなかったことにします。

<考え方>
仕入れた時の仕訳:  (仕入)100 (買掛金)100
               ⇔ 入れ替える
返品した時の仕訳:  (買掛金)10 (仕入)10
※仕入時の仕訳を入れ替えて、返品した時の仕訳をすることで、もともと商品を仕入れていなかったと考えることが出来ます。

また、売り上げた商品が返品された時の仕訳は以下のようになります。

⑥A商店は、B商店に掛けで売り上げた商品150円のうち、10円分が返品された。

(売上)10 (売掛金)10

いったん売り上げた商品が、返品されることを売上戻りと言います。
売上戻りがあったときは、返品分の売上を取り消して、返品分の売上をなかったことにします。

<考え方>
売り上げた時の仕訳:  (売掛金)150 (売上)150
               ⇔ 入れ替える
返品された時の仕訳:  (売上)10 (売掛金)10
※売上時の仕訳を入れ替えて、返品された時の仕訳をすることで、もともと商品を売り上げていなかったと考えることが出来ます。

商品の値引きがあった時

次に、商品を値引きしてもらった時の仕訳を見ていきます。

⑦A商店は、B商店より掛けで仕入れた商品100円に傷が少しついていたため、10円の値引きをしてもらった。

(買掛金)10 (仕入)10

仕入れた商品に傷や汚れなどがあり、商品の代金を下げてもらうことがあります。
これを仕入値引きといいます。
仕入値引きをしてもらったときは、値引いてもらった分、安く仕入れたことになります。
したがって、値引き分の仕入を取り消して、値引き分の商品の仕入をなかったことにします。

<考え方>
仕入れた時の仕訳:   (仕入)100 (買掛金)100
                ⇔ 入れ替える
値引された時の仕訳:  (買掛金)10 (仕入)10
※仕入時の仕訳を入れ替えて、値引きされた時の仕訳をすることで、もともと商品を90円で仕入れたと考えることが出来ます。

また、商品を値引きしたときの仕訳は以下のようになります。

⑧A商店は、B商店に掛けで売り上げた商品150円に少し傷がついていたため、10円の値引きを行った。

(売上)10 (売掛金)10

売り上げた商品に傷や汚れなどがあり、商品の代金を下げることがあります。
これを売上値引きといいます。
売上値引きを行ったときは、値引いた分、安く売り上げたことになります。
したがって、値引き分の売上を取り消して、値引き分の商品の売上をなかったことにします。

<考え方>
売り上げた時の仕訳:   (売掛金)150 (売上)150
                 ⇔ 入れ替える
値引した時の仕訳:    (売上)10 (売掛金)10
※売上時の仕訳を入れ替えて、値引きした時の仕訳をすることで、もともと商品を140円で売り上げたと考えることが出来ます。

以上から、返品と値引きの処理は全く同じであることがわかりました。
したがって、後から仕訳だけを確認しても、その取引が返品なのか値引きなのかはわかりません。

当店負担の送料が発生した時

最後に当店負担の送料の考え方を解説していきます。
当店負担とは、送料を当店の費用として処理することです。

⑨A商店は、B商店より商品100円を仕入れ、代金は掛けとした。なお、引取運賃(当店負担)10円を現金で支払った。

(仕入)110 (買掛金)100
       (現金)10

商品を仕入れる時には、商品の代金だけでなく、別途、送料などの費用がかかることがあります。
この費用を仕入諸掛りと言います。
今回は商品を仕入れるのにかかった費用として、引取運賃が発生しています。
仕入諸掛りは商品の仕入れにかかった費用なので、商品の仕入原価に含めて処理します。

⑩A商店は、B商店へ商品150円を売り上げ、代金は掛けとした。なお、発送運賃(当店負担)10円を現金で支払った。

(売掛金)150 (売上)150
(発送費) 10 (現金) 10

商品を発送する時には、商品の代金だけでなく、別途、送料などの費用がかかることがあります。
この費用を売上諸掛りと言います。
今回は商品を発送するのにかかった費用として、発送運賃が発生しています。
売上諸掛りを当店が負担したときは、発送費(費用)として処理します。

実際の試験では、当店負担の場合が多く出題されます。
問題文に誰が負担するか指示がない時は、当店負担と考えて処理してください。

今回、新たに出てきた勘定科目

・資産
商品、現金、売掛金

・負債
買掛金

・純資産(資本)

・費用
仕入、発送費

・収益
商品売買益、売上

今回はここまでです。お疲れさまでした。
次回は「現金」について解説します。