会計学の世界では、決算日に当期の純損益を正確に計算するために、費用と収益に関して、当期分と次期分をきちんと区別する必要があります。
また、間違えて仕訳してしまった時も正しく修正する必要があります。

今回は、費用・収益の繰延べと見越し、そして訂正仕訳について解説していきます。

家賃を支払った(費用を前払いした)時

① ×1年7月1日、事務所の家賃120円(1年分)を、小切手を振り出して支払った。

(支払家賃)120 (当座預金)120

ここで、支払家賃しはらいやちんという新たな勘定科目が出てきました。
支払家賃は、費用に分類されます。

事務所や店舗などの家賃を支払った時は、支払家賃(費用)として処理します。
支払った家賃は1年分なので、1年分の金額(120円)で処理します。

決算日の処理(費用の繰延べ)

② ×2年3月31日、決算日(当期:×1年4月1日~×2年3月31日)につき、時期の家賃を繰り延べる。なお、A商店は×1年7月1日に家賃120円(1年分)を支払っている。

(前払家賃)30 (支払家賃)30

ここで、前払家賃まえばらいやちんという新たな勘定科目が出てきました。
前払家賃は、資産に分類されます。

今回の例では、×1年7月1日に1年分の家賃を支払い、支払家賃(費用)として処理しています。
1年分の家賃を支払った時の仕訳:(支払家賃)120 (当座預金)120

このうち、×1年7月1日から×2年3月31日までの9ヶ月分は当期の家賃ですが、×2年4月1日から×2年6月30日までの3ヶ月分は次期の家賃です。
したがって、いったん計上した1年分の支払家賃(費用)のうち、3ヶ月分を減らします。
次期の支払家賃:120円×(3ヶ月/12ヶ月)=30円

なお、次期分の費用を当期に前払いしているので、前払いしている金額だけ次期にサービスを受ける権利があります。
そこで、借方は前払費用まえばらいひよう(資産)で処理します。

※前払費用の勘定科目は、支払った費用によって名前が変わります。
今回は、家賃の前払いなので、「前払家賃」で処理します。

このように、当期に支払った費用のうち、次期分を当期の費用から差し引くことを費用の繰延べくりのべと言います。

翌期首の仕訳(費用の繰延べ)

③ ×2年4月1日、期首につき、前期末に繰り延べた支払家賃30円の再振替仕訳を行う。

(支払家賃)30 (前払家賃)30

決算日(前期末)において、次期分として繰り延べた費用は、翌期首(次期の期首)に逆の仕訳をして振り戻します。
この仕訳を再振替仕訳さいふりかえしわけと言います。

考え方
決算日の仕訳:
(前払家賃)30 (支払家賃)30
      ⇔ 入れ替える
翌期首の仕訳:
(支払家賃)30 (前払家賃)30

再振替仕訳をすることにより、前期(×1年度)に繰り延べた費用が、当期(×2年度)の費用となります。

※初めのうちは、再振替仕訳の意味を理解しようとすると、頭がパンクします。
費用の繰延べには再振替仕訳が必要!と覚えてしまいましょう。

お金を借り入れた(利息を後払いとした)時

④ ×1年12月1日、A商店は銀行から、借入期間1年、年利2%、利息は返済時に支払うという条件で、現金600円を借り入れた。

(現金)600 (借入金)600

銀行からお金を借り入れた時は、現金(資産)が増加するとともに、借入金(負債)が増加します。
なお、返済時に利息を支払うため、この時点では利息の処理はしません。

決算日の処理(費用の見越し)

⑤ ×2年3月31日、決算日(当期:×1年4月1日~×2年3月31日)につき、当期分の利息を見越計上する。なお、A商店は×1年12月1日に銀行から、借入期間1年、年利率2%、利息は返済時に支払うという条件で、現金600円を借り入れている。

(支払利息)4 (未払利息)4

ここで、未払利息みばらいりそくという新たな勘定科目が出てきました。
未払利息は、負債に分類されます。

借入金の利息は返済時(×2年11月30日)に支払うため、まだ費用として計上していません。
しかし、×1年12月1日から×2年3月31日までの4ヶ月分の利息は当期の費用なので、この4ヶ月分を支払利息(費用)として処理します。
当期の支払利息:600円×2%×(4ヶ月/12ヶ月)=4円

なお、当期分の費用をまだ支払っていないので、次期に支払わなければならないという義務が生じます。
そこで、貸方は未払費用みばらいひよう(負債)で処理します。
今回は、利息の未払いなので、「未払利息」で処理します。

このように、当期の費用にもかかわらず支払いがされていない分を、当期の費用として計上することを費用の見越しみこしと言います。

再振替仕訳

決算日に当期分として見越した費用は、翌期首(次期の期首)に逆の仕訳をして振り戻します。

(未払利息)4 (支払利息)4

地代を受け取った(収益を前受けした)時

⑥ ×1年11月1日、A商店はB商店に土地を貸し、地代240円(1年分)を小切手で受け取った。

(現金)240 (受取地代)240

ここで、受取地代うけとりちだいという新たな勘定科目が出てきました。
受取地代は、収益に分類されます。

土地を貸し付けて、地代を受け取った時は、受取地代(収益)として処理します。

決算日の処理(収益の繰延べ)

⑦ ×2年3月31日、決算日 (当期:×1年4月1日~×2年3月31日)につき、 次期分の地代を繰り延べる。なお、A商店は×1年11月1日に地代240円(1年分)を受け取っている。

(受取地代)140 (前受地代)140

ここで、前受地代まえうけちだいという新たな勘定科目が出てきました。
前受地代は、負債に分類されます。

今回の例では、×1年11月1日に1年分の地代を受け取り、受取地代(収益)として処理しています。
1年分の地代を受け取った時の仕訳:(現金)240 (受取地代)240

このうち、×1年11月1日から×2年3月31日までの5ヶ月分は当期の地代ですが、×2年4月1日から×2年10月31日までの7ヶ月分は次期の地代です。
したがって、いったん計上した1年分の受取地代(収益)のうち、7ヶ月分を減らします。
次期の受取地代:240円×(7ヶ月/12ヶ月)=140円

なお、次期分の収益を当期に前受けしているので、前受けしている金額だけ次期にサービスを提供する義務が生じます。
そこで、貸方は前受収益まえうけしゅうえき(負債)で処理します。
今回は、地代の前受けなので、「前受地代」で処理します。

このように、当期に受け取った次期分の収益を、当期の収益から差し引くことを収益の繰延べと言います。

再振替仕訳

決算日に次期分として繰延べた収益は、翌期首に逆の仕訳をして振り戻します。

(前受地代)140 (受取地代)140

お金を貸し付けた(利息を後で受け取る)時

⑧ ×1年6月1日、A商店は、C商店に貸付期間1年、年利率3%、利息は返済時に受け取るという条件で現金800円を貸し付けた。

(貸付金)800 (現金)800

お金を貸し付けた時は、現金(資産)が減少するとともに、貸付金(資産)が増加します。
なお、返済時に利息を受け取るため、この時点で利息の処理はしません。

決算日の処理(収益の見越し)

⑨ ×2年3月31日、決算日(当期:×1年4月1日~×2年3月31日)につき、当期分の利息を見越計上する。なお、A商店は×1年6月1日にC商店に、貸付期間1年、年利率3%、利息は返済時に受け取るという条件で、現金800円を貸し付けている。

(未収利息)20 (受取利息)20

ここで、未収利息みしゅうりそくという新たな勘定科目が出てきました。
未収利息は、資産に分類されます。

貸付金の利息は返済時(×2年5月31日)に支払うため、まだ収益として計上していません。
しかし、×1年6月1日から×2年3月31日までの4ヶ月分の利息は当期の収益なので、この10ヶ月分を受取利息(収益)として処理します。
当期の受取利息:800円×3%×(10ヶ月/12ヶ月)=20円

なお、当期分の収益をまだ受け取っていないので、次期に受け取ることが出来ます。
そこで、借方は未収収益みしゅうしゅうえき(資産)で処理します。
今回は、利息の未収なので、「未収利息」で処理します。

このように、当期の収益にもかかわらずまだ受け取っていない分を、当期の収益として計上することを収益の見越しと言います。

再振替仕訳

決算日に当期分として見越した費用は、翌期首(次期の期首)に逆の仕訳をして振り戻します。

(受取利息)20 (未収利息)20

誤った仕訳を訂正する時

⑩A商店は、仕入先B商店に対する買掛金100円を現金で支払った時に、借方科目を仕入と仕訳してしまったので、これを訂正する。

(買掛金)100 (仕入)100

誤った仕訳をしていた時は、これを訂正しなければなりません。
この際に行う仕訳を訂正仕訳ていせいしわけと言います。

訂正仕訳をつくるには、まず(Ⅰ)正しい仕訳を考えます。
今回は、「買掛金を現金で支払った」という取引なので、正しい仕訳は以下のようになります。

(Ⅰ) (買掛金)100 (現金)100

次に、(Ⅱ)誤った仕訳を考えます。
今回は、借方科目を仕入で処理しているので、誤った仕訳は次のようになります。

(Ⅱ) (仕入)100 (現金)100

そして、(Ⅲ)誤った仕訳の逆仕訳をします。
これによって、誤った仕訳が取り消されることになります。

(Ⅲ) (現金)100 (仕入)100

最後に、上記 (Ⅰ)正しい仕訳(Ⅲ)誤った仕訳の逆仕訳 を足した仕訳が訂正仕訳となります。

訂正仕訳:
(買掛金)100 (現金)100
( 現 金 )100 (仕入)100
(買掛金)100 (仕入)100

今回、新たに出てきた勘定科目

・資産
前払費用、未収収益

・負債
未払費用、前受収益

・純資産(資本)

・費用
支払家賃

・収益
受取地代