ここまで、材料費と労務費について説明してきました。
最後は、工業簿記における労務費について解説します。
経費の分類
製品を作るのにかかった費用で、材料費と労務費以外のものを経費と言います。
経費は次の4つに分類されます。
「支払経費、月割経費、測定経費、発生経費」
1. 支払経費
その月の支払額を消費額とする経費を支払経費と言います。
支払経費には、外注加工賃や修繕費などがあります。
なお、外注加工賃とは、材料などの加工を外部の業者に委託した時に支払う金額のことを言います。
2. 月割経費
一定期間(1年間など)の発生額を計算し、それを月割計算した金額をその月の消費額とする経費を、月割経費と言います。
月割経費には、工場建物の減価償却費や備品の賃借料などがあります。
3. 測定経費
メーターなどで測定した消費量をもとに計算した金額をその月の消費額とする経費を、測定経費と言います。
測定経費には、電気代や水道代などがあります。
4. 発生経費
その月の発生額を消費額とする経費を、発生経費と言います。
発生経費には、材料棚卸減耗費などがあります。
なお、これらの経費のうち、外注加工賃と特許権使用料のみ直接経費に分類されます。
一方で、それ以外の経費は全て、間接経費となります。
経費を消費した時
経費を消費した時は、大きく分けて3つの処理方法があります。
1. 経費の諸勘定を用いない方法
2. 経費勘定を用いる方法
3. 経費の諸勘定を用いる方法
この3つには、用いる勘定科目の違いがあります。
なお、試験で最も出題されているのは、「1.経費の諸勘定を用いない方法」です。
順番に解説していきます。
1. 経費の諸勘定を用いない方法
① 外注加工賃600円を現金で支払った。また、工場建物の減価償却費を計上する。なお、1年間の減価償却費は2,400円である。
(仕 掛 品)600 ( 現 金 )600
(製造間接費)200 (減価償却累計額)200
今回は経費の諸勘定を用いない方法です。
この方法では、外注加工賃などの直接経費は仕掛品勘定で処理し、工場建物の減価償却費などの間接経費は製造間接費で処理します。
なお、工場建物の減価償却費のように、1年分の金額で示されているときは、12ヵ月で割って1ヵ月分を計上します。
2. 経費勘定を用いる方法
② 外注加工賃600円を現金で支払った。また、工場建物の減価償却費を計上する。なお、1年間の減価償却費は2,400円である。
( 経 費 )600 ( 現 金 )600
( 経 費 )200 (減価償却累計額)200
(仕 掛 品)600 ( 経 費 )600
(製造間接費)200 ( 経 費 )200
今回は経費勘定を用いる方法です。
この方法では、経費を消費した時に、直接経費も間接経費も、いったん経費勘定で処理します。
そして、直接経費は経費勘定から仕掛品勘定に、間接経費は経費勘定から製造間接費勘定に振り替えます。
3. 経費の諸勘定を用いる方法
③ 外注加工賃600円を現金で支払った。また、工場建物の減価償却費を計上する。なお、1年間の減価償却費は2,400円である。
(外注加工賃)600 ( 現 金 )600
(減価償却費)200 (減価償却累計額)200
(仕 掛 品)600 ( 外 注 加 工 賃 )600
(製造間接費)200 ( 減 価 償 却 費 )200
今回は経費の諸勘定を用いる方法です。
この方法では、経費を消費した時に、いったん各経費の勘定(外注加工賃と減価償却費)で処理します。
そして、直接経費は各経費の勘定から仕掛品勘定に、間接経費は各経費の勘定から製造間接費勘定に振り替えます。
今回はここまでです。お疲れさまでした。