手形やその他の債権債務については、3級で学習しました。
2級ではもう少し踏み込んだ手形の話や、電子記録債権などについて解説します。
3級の復習
まず最初に、3級での手形の復習です。
裏書譲渡と手形の割引きについて簡単に説明します。
約束手形の裏書譲渡
① A(株)は、B(株)から商品100円を仕入れ、代金は先にC(株)から受け取っていた約束手形を裏書譲渡した。
(仕入)100 (受取手形)100
A(株)は、先にC(株)から受け取っていた約束手形をB(株)に渡すため、受取手形(資産)の減少として処理します。
なお、裏書譲渡した約束手形を受け取った側は、受取手形(資産)の増加として処理します。
約束手形の割引き
② A(株)は先にC(株)から受け取っていた約束手形100円を割り引き、割引料10円を差し引いた残額を当座預金に預け入れた。
(当 座 預 金)90 (受取手形)100
(手形売却損)10
約束手形を割り引いた時は、受取手形(資産)の減少として処理します。
また、手形を割り引く際にかかった手数料は、手形売却損(費用)として処理します。
3級の内容を忘れてしまった人は復習し直しましょう。
所有する手形が不渡りとなったとき
手形の満期日に手形代金が決済されないことを手形の不渡りと言います。
所有する手形が不渡りとなった場合、手形を振り出した人に対して、改めて代金を支払うよう請求することが出来ます。
この請求を、償還請求と言い、そのさいにかかる費用を償還請求費用と言います。
③ A(株)はD(株)振出の約束手形100円について、満期日に取引銀行を通じて代金の取立てを依頼したところ、支払いが拒絶された。そのため、D(株)に対して償還請求をした。なお、そのさいに償還請求費用10円を現金で支払った。
(不渡手形)110 (受取手形)100
(現金)10
手形が不渡りになった時は、改めて代金を回収することが出来る権利があります。
この権利を不渡手形(資産)で処理し、通常の受取手形と区別するために、受取手形(資産)から不渡手形(資産)に振り替えます。
この時、不渡りに関する諸費用についても、手形振出人に請求できるので、不渡手形の金額には、手形代金のほか不渡りに関する諸費用も含めます。
④ A(株)はD(株)に対する不渡手形110円を現金で回収した。
(現金)110 (不渡手形)100
不渡手形の代金を回収できた時は、不渡手形(資産)の減少として処理します。
手形の更改をしたとき
以前振り出した手形の満期日に、資金の都合がつかないなどの理由で、手形を持っている人の同意を得て、支払期限を延ばしてもらうことがあります。
この時、新しい手形を振り出し、古い手形と交換しますが、これを手形の更改と言います。
手形の更改を求めたとき
手形の更改において、利息について2通りの仕訳があります。
・利息を新手形の金額に含めて処理する場合
・利息を現金などで支払う場合
⑤ A(株)は、以前B(株)に振り出した約束手形100円について、2ヶ月の期間延長を求め、同意を得た。なお、期間延長に伴う利息は10円である。
・利息を新手形の金額に含めて処理する場合
(支払手形)100 (支払手形)110
(支払利息)10
借方が古い支払手形(負債)の減少です。
貸方が新しい支払手形の増加(負債)です。
・利息を現金などで支払う場合
(支払手形)100 (支払手形)100
(支払利息)10 (現金)10
手形の更改を求められたとき
⑥ A(株)は、以前C(株)より受け取っていた約束手形100円について、2ヶ月の期間延長を求められ、同意した。なお、期間延長に伴う利息は10円である。
・利息を新手形の金額に含めて処理する場合
(受取手形)110 (受取手形)100
(受取利息)10
借方が新しい受取手形(資産)の増加です。
貸方が古い受取手形(資産)の減少です。
・利息を現金などで受け取る場合
(受取手形)100 (受取手形)100
( 現 金 )10 (受取利息)10
手形による商品以外の物の売買
支払手形や受取手形は、「商品」の売買において用いられます。
したがって建物や土地など、商品以外の物の売買では別の勘定科目を使います。
商品以外の物を手形で買ったとき
⑦ A(株)は、B(株)から倉庫(建物)を300円で購入し、代金は約束手形で支払った。
(建物)300 (営業外支払手形)300
今回、建物を買っているので、建物(資産)が増えます。
また、建物や土地など商品以外の物を手形で買った時は、商品の売買と区別するため営業外支払手形(負債)で処理します。
つまり、商品を買った時の手形代金は支払手形で、商品以外の物を買った時の手形代金は営業外支払手形で処理します。
⑧ 後日、B(株)に手形代金300円を現金で支払った。
(営業外支払手形)300 (現金)300
商品以外の物を売ったとき
⑨ A(株)は、C(株)に土地を500円で売却し、代金は約束手形で受け取った。
(営業外受取手形)500 (土地)500
今回、土地を売っているので、土地(資産)が減ります。
また、建物や土地など商品以外の物を売って、代金は手形で受け取った時は営業外受取手形(資産)で処理します。
つまり、商品を売った時の手形代金は受取手形で、商品以外の物を売った時の手形代金は営業外受取手形で処理します。
⑩ 後日、C(株)より手形代金500円を現金で受け取った。
(現金)500 (営業外受取手形)500
電子記録債権の処理
手形は、紙媒体ということもあり、様々な問題点があります。
・紛失のリスク
・手形振出しに関する事務処理の手間
・印紙の添付が必要なので、印紙代がかかるなど
そこで、これらの問題点を克服するために、電子記録債権が登場しました。
電子記録債権は、電子記録債権機関が管理する記録簿に必要事項を登録することにより権利が発生します。
電子記録債権の発生方法には2通りあります。
今回は、(1)債務者請求方式に基づいて解説します。
(1) 債務者請求方式…債務者側(買掛金等がある側)が発生記録の請求を行うことによって、電子記録債権が発生する方式
(2) 債権者請求方式…債権者側(売掛金等がある側)が発生記録の請求を行うことによって、電子記録債権が発生する方式。この場合には、一定期間内に債務者の承諾が必要。
電子記録債権(債務)が発生したとき
⑪ A(株)はB(株)に対する買掛金100円の支払いを電子記録債権で行うため、取引銀行を通じて債務の発生記録を行った。
債務者:A(株)の仕訳
(買掛金)100 (電子記録債務)100
債権者:B(株)の仕訳
(電子記録債権)100 (売掛金)100
発生記録を行うことにより、債務者:A(株)には電子記録債務(負債)が、債権者:B(株)には電子記録債権(資産)が発生します。
それに伴って、買掛金(負債)と売掛金(資産)を減少させます。
電子記録債権(債務)が消滅したとき
⑫ A(株)は電子記録債務100円について、取引銀行の当座預金口座からB(株)の取引銀行の当座預金口座に払い込みを行った。
債務者:A(株)の仕訳
(電子記録債務)100 (当座預金)100
債権者:B(株)の仕訳
(当座預金)100 (電子記録債権)100
債務者:A(株)の口座から債権者:B(株)の口座に払い込みが行われると、債務者の電子記録債務(負債)および債権者の電子記録債権(資産)が消滅します。
電子記録債権を譲渡したとき_その1
⑬ B(株)はD(株)に対する買掛金100円の決済のため、所有する電子記録債権100円を譲渡することとし、取引銀行を通じて譲渡記録を行った。
譲渡人:B(株)の仕訳
(買掛金)100 (電子記録債権)100
譲受人:D(株)の仕訳
(電子記録債権)100 (売掛金)100
手形の裏書譲渡と同様に、電子記録債権も他人に譲渡することが出来ます。
電子記録債権を譲渡したとき、譲渡人:B(株)は電子記録債権(資産)が減少します。
電子記録債権を譲受したとき、譲受人:D(株)は電子記録債権(資産)が増加します。
電子記録債権を譲渡したとき_その2
⑭ B(株)は所有する電子記録債権100円をC(株)に95円で売却(譲渡)し、譲渡記録を行った。なお、譲渡代金は現金で受け取った。
譲渡人:B(株)の仕訳
( 現 金 )95 (電子記録債権)100
(電子記録債権売却損)5
電子記録債権を売却(譲渡)した時は、電子記録債権(資産)を減少させます。
また、電子記録債権の債権金額と譲渡金額に差額が出る時は、電子記録債権売却損(費用)で処理します。
債権譲渡の処理
受取手形や電子記録債権だけでなく、売掛金などその他の債権も他人に譲渡することが出来ます。
なお、債権を譲渡する時は、債権を譲渡することについて債務者の承諾が必要です。
売掛金を譲渡したとき
⑮ A(株)はB(株)に対する買掛金100円を支払うために、C(株)に対する売掛金100円をC(株)の承諾を得てB(株)に譲渡した。
(買掛金)100 (売掛金)100
買掛金を支払ったので、買掛金(負債)を減らします。
また売掛金を譲渡したので、売掛金(資産)を減らします。
⑯ A(株)はC(株)に対する売掛金100円をC(株)の承諾を得て、D(株)に95円で譲渡し、代金は現金で受け取った。
( 現 金 )95 (売掛金)100
(債権売却損)5
売掛金の譲渡金額(売却価額)が、帳簿価額よりも低い時は、その差額を債権売却損(費用)で処理します。
今回新たに出てきた勘定科目
・資産
不渡手形、営業外受取手形、電子記録債権
・負債
営業外支払手形、電子記録債務
・純資産
ー
・費用
手形売却損、電子記録債権売却損、債権売却損
・収益
ー