備品を購入せずに、リース会社からリースする(借りる)ことがあります。
今回はリース取引の内容や、その処理について解説します。
リース取引とは
パソコンやコピー機、FAXなど、事業を始めるのに必要な固定資産(リース物件)をあらかじめ決められた期間(リース期間)にわたって借りる契約を結び、借手が貸手に使用料を支払う取引をリース取引と言います。
なお、借手をレッシー、貸手をレッサーとも言います。
固定資産を購入すると、通常は法定耐用年数によって減価償却をしますが、技術革新が著しい近年では、法定耐用年数通りに固定資産を使っていたのでは、固定資産の陳腐化に対応できません。
しかし、リース取引ならば、リース期間は借手と貸手の合意によって決められるので、固定資産の陳腐化を予測してリース期間を設定すれば、いつでも最新の固定資産を使えるというメリットがあります。
リース取引の分類
リース取引は、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類されます。
「ファイナンス・リース取引」
ファイナンス・リース取引では、通常の売買取引と同様に処理(売買処理)します。
また、リース取引のうち(a) 解約不能(ノンキャンセラブル)と(b) フルペイアウトの2つの要件を満たす取引をファイナンス・リース取引と言います。
(a)解約不能(ノンキャンセラブル)
1つ目の要件は、解約することが出来ないリース取引であるということです。
法的に解約が可能でも、解約時に多額の違約金を支払う必要があるなど、実質的に解約できないリース取引も含まれます。
(b)フルペイアウト
2つ目の要件は、借手がリース取引から生じる経済的利益をほとんど全て受けることができ、また、借手がリース物件の使用にかかる費用を実質的に負担することです。
「オペレーティング・リース取引」
オペレーティング・リース取引では、通常の賃貸借取引と同様に処理(賃貸借処理)します。
また、ファイナンス・リース取引以外のリース取引を、オペレーティング・リース取引と言います。
ファイナンス・リース取引の処理
ファイナンス・リース取引では、通常の売買取引(固定資産の購入)と同様の処理を行います。
また、2級の試験範囲では、借手側の処理だけを学習します。
利息相当額の処理
借手が貸手に支払うリース料(リース物件の使用料)の中には、利息相当額が含まれます。
この利息相当額については、原則(1級の範囲)と例外(2級の範囲)があります。
・原則(1級の範囲)
所有権移転ファイナンス・リース取引については、必ず利息法によって処理します。
なお、所有権移転外ファイナンス・リース取引も原則的には利息法によって処理しますが、下記の例外があります。
・例外(2級の範囲)
所有権移転外ファイナンス・リース取引で、重要性が乏しい場合は(a) 利子込み法または(b) 利子抜き法(利息相当額を定額法により配分する方法)のいずれかを選択することが出来ます。
ファイナンス・リース取引を開始したとき
① ×1年4月1日、A(株)は下記の条件によって奈良リース(株)と備品のリース契約を結んだ。
[条件]
1. リース期間:5年
2. 見積現金購入価額:8,800円
3. 年間リース料:2,000円(毎年3月31日に後払い)
(a) 利子込み法の仕訳:
(リース資産)10,000 (リース債務)10,000
(b) 利子抜き法の仕訳:
(リース資産)8,800 (リース債務)8,800
(a) 利子込み法において、リース取引を開始したときは、利息相当額を含んだリース料総額で、リース資産(資産)を計上するとともに、リース債務(負債)を計上します。
今回の例では、年間リース料が2,000円で、リース期間が5年なので、リース料総額は10,000円となります。
(b) 利子抜き法において、リース取引を開始したときは、リース料総額から利息相当額を控除した金額(見積現金購入価額)で、リース資産(資産)を計上するとともに、リース債務(負債)を計上します。
リース料を支払ったとき
② ×2年3月31日、A(株)は奈良リース(株)に当期分のリース料2,000円を現金で支払った。
(a) 利子込み法の仕訳:
(リース債務)2,000 (現金)2,000
(b) 利子抜き法の仕訳:
(リース債務)1,760 (現金)2,000
(支払利息)240
(a) 利子込み法において、リース料を支払ったときは、支払ったリース料(利息相当額を含む)の分だけリース債務(負債)を減少させます。
(b) 利子抜き法において、リース料を支払ったときは、支払ったリース料(利息相当額を含まない)の分だけリース債務(負債)を減少させます。
今回の例では、利子抜き法の場合のリース債務の計上価額が8,800円(見積現金購入価額)なので、減少させるリース債務は次のように計算できます。
リース債務:8,800円÷5年=1,760円
また、リース料に含まれる利息相当額については支払利息(費用)で処理します。
支払利息:1,200円÷5年=240円
決算時の仕訳
③ ×2年3月31日、決算につき、次の条件により所有するリース物件(備品)について減価償却を行う。
[条件]
1. リース期間:5年(リース契約日は当期首)
2. 見積現金購入価額:8,800円
3. 年間リース料:2,000円(毎年3月31日に後払い)
4. リース物件の減価償却は定額法(記帳方法は間接法)によって行う。なお、耐用年数はリース期間とする。
5. 利子込み法の場合のリース資産の計上価額は10,000円、利子抜き法の場合のリース資産の計上価額は8,800円である。
(a) 利子込み法の仕訳:
(減価償却費)2,000 (減価償却累計額)2,000
(b) 利子抜き法の仕訳:
(減価償却費)1,760 (減価償却累計額)1,760
(a) 利子込み法において、決算時には、リース資産の計上価額をもとに、耐用年数をリース期間、残存価額を0円として減価償却を行います。
利子込み法の場合のリース資産の計上価額は10,000円なので、減価償却費は次のように計算できます。
減価償却費:10,000円÷5年=2,000円
(b) 利子抜き法においても、決算時には、リース資産の計上価額をもとに、耐用年数をリース期間、残存価額を0円として減価償却を行います。
利子込み法の場合のリース資産の計上価額は8,800円なので、減価償却費は次のように計算できます。
減価償却費:8,800円÷5年=1,760円
リース料支払日と決算日が異なる場合
利子抜き法の場合で、リース料支払日と決算日が異なる場合は、決算日において、利息の未払計上(または前払計上)を行います。(例) 次の一連の取引について、利子抜き法で仕訳しなさい。
×1年7月1日、奈良リース(株)とリース契約(ファイナンス・リース取引に該当)を結び、リース期間5年、見積現金購入価額8,800円、年間リース料2,000円(支払日は毎年6月末日)で備品を取得した。
×2年3月31日、決算日を迎えた。
×2年4月1日、再振替仕訳を行う。
×2年6月30日、第1回目のリース料2,000円を現金で支払った。×1年7月1日の仕訳:
(リース資産)8,800 (リース債務)8,800
×2年3月31日の仕訳:
(減価償却費)1,320 (減価償却累計額)1,320
(支 払 利 息)180 (未払利息)180
×2年4月1日の仕訳:
(未払利息)180 (支払利息)180
×2年6月30日の仕訳:
(リース債務)1,760 (現金)2,000円
(支 払 利 息)240
オペレーティング・リース取引の処理
④ 次の一連の取引について仕訳しなさい。
×1年7月1日、奈良リース(株)とリース契約(オペレーティング・リース取引に該当)を結び、リース期間5年、年間リース料2,000円(支払日は毎年6月末日)で備品を取得した。
×2年3月31日、決算日を迎えた。
×2年4月1日、再振替仕訳を行う。
×2年6月30日、第1回目のリース料2,000円を現金で支払った。
×1年7月1日の仕訳:
仕訳なし
×2年3月31日の仕訳:
(支払リース料)1,500 (未払リース料)1,500
×2年4月1日の仕訳:
(未払リース料)1,500 (支払リース料)1,500
×2年6月30日の仕訳:
(支払リース料)2,000 (現金)2,000
オペレーティング・リース取引では、通常の賃貸借取引に準じて処理します。
取引を開始したときは何も処理しません。
決算時には、当期分のリース料を支払リース料(費用)の未払計上を行います。
・支払リース料の未払計上:2,000円×(9ヶ月/12ヶ月)=1,500円
翌期首には再振替仕訳をします。
最後に、リース料支払時には支払リース料(費用)を計上します。
今回新たに出てきた勘定科目
・資産
リース資産
・負債
リース債務、未払リース料
・純資産
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・費用
支払リース料
・収益
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